秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~

「ごめん、違う。彼氏だよ」
「あー、なるほど。でも隠す必要ありますか」

杉山君が拓海の顔を覗こうとするからすぐに二人の間に立って

「隠してないよ!でも生徒に先生のプライベート軽々しく伝えるのは違うでしょう?ほら!早く帰って!」
「…はーい」

納得のいかない顔をしたまま仕方がない、とでもいうようにそう返事をして踵を返そうとする杉山君。

「ごめんね。沙月は俺のなんだ」
「っ」

そう言って背後から伸びてきた腕で彼の方へ引き寄せられる。
彼の胸に後頭部を預けるような形になって驚いたのは私だけじゃない。杉山君も普段以上に目を大きく見開いて固まる。

「ちょっと!拓海!」
「帰ろう」

すぐに彼から離れるように体を離すが、杉山君はそれ以上何も言わずにふいっと顔を背けるとそのまま自転車に乗って帰ってしまった。

「タクシーとめてるから。帰ろう」
「…うん」

心臓が早鐘を打つのを彼に悟られないように目線を落として彼の隣を歩く。
ああいうこと慣れてるのかな。彼はたまに甘くて胸焼けしそうなセリフを躊躇なく伝えてくる。役でそういうことを言いすぎて抵抗がないのかもしれない。

でも私は一般人だから、慣れているわけもなくこういう一つ一つにドキドキして心臓が持たないし、振り回されているような気分になる。
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