秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~

「マサト、移籍したんだ」
「え…?マサトさんが?どうして」
「沙月の件が引き金になったのは間違いないけどそれだけじゃない。もともとうちの事務所と合ってなかったんだ」
「…そうだったんだ」

マサトさんとはあれから会うことはなくなったが、久しぶりに名前を聞いて自然に彼の顔を思い出した。

「やっぱり沙月のことを隠すことはしたくない。事務所にも伝えてる」
「…でも、事務所は認めてないんだよね?」
「そうだね。どうしても認めてくれないのならマサトのように移籍しようかと思ってる」

彼の発する言葉は一言一言に力があって、意思を感じる。
私との関係を終わらせるのではなく、つづけようとしてくれていることに胸が熱くなる。

ただ、移籍と言ってもすぐに実行出来るわけもない。
今は事務所が火消しをしている最中なのは事実だ。だとしたらやはり今公表するのはいいことではない気がした。

「来週、映画の試写会がある。そのあとにもしかしたら記者たちに聞かれるかも」
「大丈夫なの?とりあえずその場では濁した方が」
「いや、正直に話そうかなって」
「え?」
「もちろん事務所には相談する。無断でやるわけにはいかないから。説得してみるよ」
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