秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
二人でエレベーターに乗り、20階のボタンを押した。
他にも芸能人とか住んでそうだなと思ってちょっと違う意味でドキドキした。
彼の部屋に入るとすぐに観葉植物が置かれている。
これは二人で買ったものだ。
それからふかふかのスリッパに足を通す。これも二人で買いに行ったものだ。
3LDKのマンションは彼ひとりには広すぎる。
いつ来ても思う。
だって彼はあまりものを持たない。物欲がないらしい。
寝室には、私のパジャマや下着もある。
洗面台には歯ブラシもあるし、お風呂には私用に拓海がシャンプーを用意してくれている。
改めてみるとこれで付き合っていない、なんて変かもしれない。
「で、今日は会えないって返事きてたんだけどさ。それってもともとデートだったんだ?」
拓海がソファに腰かけると同時に堅い口調でそう言う。私は立ったまま拓海に視線を向ける。
棘のある言葉に私は口を尖らせた。
「違うよ。たまたま会ったの!電車で」
「じゃあ予定っていうのは?」
「…それは、」
なんて言おうか。あまり会いたくなかった、なんて言ったらきっと悲しむ。
違うんだよ、拓海と今までの関係なら…何も迷うことなんかなかった。でも、あのプロポーズ以降、私と彼の関係は変わった。
それを受け入れられない自分がいる。
と。
急に勢いよく立ち上がる拓海は私と距離を縮める。
思わず一歩、更に一歩と後ずさる。顔に緊張が出ているか筋肉がぴくぴく動いているのが自分でわかる。
トン、と壁に背中があたる。
行き止まりだ。