秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
あ、と小さな声が漏れ出る。
私の足は止まったのに、彼は止まらずに私の目の前まで来ると両肘を壁につけて私を囲うようにする。余計逃げられなくなった。
これがいわゆる壁ドンか…なんて呑気なことが頭に浮かぶ。

「これって、ドラマの練習?」

必死に笑顔を作ってそう言った。でも、彼は答えない。
真剣な焦げ茶色の瞳は私の心の奥を覗こうとするからすぐに逸らしたくなる。

ドラマの練習でもなんでもないことは私もわかっている。
でも、もう無理だよ。

だって、こんな関係望んでない。
キスされて体を触られて嫌じゃなかったよ。でも…―。

「これから意地悪なこと、言うよ」

抑えの聞いた声が耳朶をうち私は、唾をのむ。
長い睫毛が揺れた。
本当に綺麗だ、彼はとてもきれい。異性の私が羨むほどに端正な顔だちをしている。スナガさんが商品だといった理由もわかる。一番近くで君を見ていたからわかる。

「俺言ったよね。沙月のこと追いかけまわすし、我慢しないって」


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