秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
私は小刻みに頷いた。

「でも沙月が俺を男として見てくれてる感じが全くない」
「そ、れは…」
「だから選んで」

選ぶ?と眉の間に皺を作り聞き返した。

「俺のこと男として見れないっていうのなら、もう沙月には会わない」

え、と吃驚の声を漏らし私は目を見開く。冗談なんかじゃないのは彼の真剣な眼差しで理解している。

「男としてみる努力してくれないなら会わない。でも沙月が努力してくれるならこのままでいる。いつも通りに会う」
「…」

二択、と言った拓海に私は固まった。つまり、拓海には伝わっていたのだろう。私が彼をそういう目で見ていないことを。それはもちろんこれからも変わらないということを。

「やだよ…もう会わないってこと?」
「うん、だから言ったじゃん、意地悪なこと言うよって」
「…それは極端すぎない?だって今までは…」

だから、と彼が声を張って私の言葉を遮る。

「だから、今までの関係は終わりって言ったじゃん」
「…」
「努力してくれる?」

本当に意地悪だ。昔の拓海ならそんなこと言わない。
でも、彼のいうことは間違っていない。ずるいのは私なのかもしれない。
今までの関係が心地よくてそれに戻りたくて。
でも、拓海はそんな関係は嫌だといった。もう本当に戻れないのだと悟った。

だったらどうしたらいいの?

もう彼とは会わないってそんなのできるの?
一緒に買い物に行って、ごはん食べたり作ったり…思い返すと楽しい思い出にはいつも拓海がいた。



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