恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
なんなんだ、こいつ。
俺が一番偉いって思ってるのだろう、器の小さい男だ。

「俺を誰だと思ってんだよ」
「っ」

男性が氷入りのグラスを手にしたかと思ったら、隣の女性に向かってそれをかけたのだ。
びっくりして目を見開いた。ママですら驚き固まる。基本的にここに来るような人は普段はちゃんとした飲み方をするのだろう。

…はぁ、最低。

私はもう借金返済のことなど頭の中からぶっ飛んでしまい、スタスタその人の目の前に行くと

「なんだお前」
「帰ってくれますか」
「あ?」

同じくお酒が入っているグラスを手に取って

「おま…っわ、」

私は躊躇なくそいつに浴びせた。
顔を真っ赤にして立ち上がるそいつはギャーギャー騒いでいたが、私は鼻で笑った。謝れとか土下座しろとか煩い。

「あんたがしたことじゃない!その子に土下座するなら私もしてやる」
「っ」
「二度とこの店に来るな!」

その男は顔を真っ赤にして鼻息荒くしてママにどう責任を取るんだとか騒いでいたようだが、ママも私と同様の(もちろん口調は私とは違って綺麗)対応をしてくれた。彼は出禁になったようだ。

ただし…―

「間違ってはないよ、あなたのしたことは」
「はい…」
「まぁでも」
「…」
「今日で試用期間は終了です」
「…はい。すみませんでした」

一日でクビになってしまった。
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