恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】

「え?金曜日…休み?」
「うん、そうだよ。その代わり土曜日出勤する」
「あ、そ、そうですか…」

デートの日が近づいてきた。朝食後、出勤前に千秋さんからの言葉に思わず小さな声を出していた。
よりにもよって今週の金曜日、千秋さんは休みだということを知り愕然とする。
なんでこうも上手くいかないのだろう。

…あぁ、どうしよう。

「ん?どうしたの?何かあった?」
「いや、別に―…」
「そっか」

千秋さんがコートを手にしているのを目の端で捉え、そろそろ家を出るのだと思って私も洗い物をする手を止めた。
玄関ホールまで千秋さんの背中を追うようにして続く。

「じゃあ行ってくるね、今日は少し遅くなるかもしれないから先に食べてていいよ」
「わかりました」

夕飯のことなんかどうだってよくて正直”金曜日”の件が気になって頭の中から離れてくれない。
千秋さんが靴を履いて、

「あ、」

私の方へ体を向けるとすっと手を伸ばす。そのまま手を引かれて、軽くキスをされた。

「行ってきます」
「…はい、いってらっしゃい」

一瞬のことで目を閉じることも忘れていた。あぁ、これはあれだ。行ってきますのキスだ。
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