恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
♢♢♢

結局、夏希君に日程の変更を申し出たけど無理と断られてしまった。金曜日がデート日というのは変わらなかった。


「お昼も友達と?」
「あー、はい、多分」
「そっか、残念だなぁ。でも楽しんできてね」
「…はい」

千秋さんの優しい発言を聞く度に罪悪感で頭が重くなる。
11時ころに家を出る予定で、私はデートだと思われないような服装(逆に言うと普段着)で髪もボブだから特に何もしなくていいよね。
パーカーの上からコートを着て玄関に向かう。

千秋さんがお見送りにきてくれた。

…夏希君とデートだって言ったらなんていうのだろう。
いっそ言ってみたらどうだろうと思ったけれどそれを実行できるほどの勇気は私にはない。

「じゃ、気を付けてね」
「はい、行ってきます」
「何時ごろ帰るの?」
「夕方には」

千秋さんはまるで小さな子供を見るような優しい目を向けてくれる。
だからなのか、やましいことのある私は無意識に視線を逸らす。
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