恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
…――

「で、ご用件はなんでしょうか」
「うん、端的に言うと、結婚してほしい」
「なるほど…って、え?!」

喫茶店はレトロな雰囲気の漂うコーヒーのおいしい店で、店内にはコーヒーの香りやパンの焼く匂いもして癒されていたのに

ぶっとんだ言葉に思わず立ち上がっていた。

「な、なにをいって…」
「何って結婚してほしいんだよ」
「…え、だって私は…」
「君のことは数日調べさせてもらった」
「…」
「母親の借金のせいで苦労しているようだね」

口元に弧を描く目の前の男はやはりつかめない。
コーヒーカップの取っ手に手をかけてそれを空に浮かせる。
そのまま口元まで運ぶその動きはとてもきれいだった。
初めてあった時も思ったけど所作が美しい。
品のある男性だ。きっと、育ちもいいのだろう。

それにお店の時もグラスを掴む手が綺麗だった。
男の人の手が苦手だったけれど、彼は綺麗だと思った。
< 17 / 282 >

この作品をシェア

pagetop