恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
玄関が見えてくると、見慣れた人がだるそうに壁に背をつけて立っていた。

「な、夏希君?!」
「夏希?」
「よう。ぜーんぶ聞かせてもらったよ」

夏希君が見えるとすかさず千秋さんが私の腰に手を回してギュッと引き寄せる。
夏希君が実家に帰ってきている事実と、何故急に腰に手を回されたのかわからずに千秋さんと夏希君に目を向ける。

「どうしてここに?」
「桜子と兄貴が実家に挨拶に来るっていうから気になって。どういう修羅場になるのかと思いきや…」

そう言って両手をポケットに突っ込んですっと背を壁から離すと私たちに一歩近づく。

「まさかあんな展開になるとはね?さすが俺の選んだ女だな」
「うん。俺の女だけどね」
「本当はちょっと顔出してすぐ帰ろうかと思ったけど、俺も話してみる」
「夏希君…」
「じゃ、」

そう言って私たちの横を通り過ぎる彼の背中はいつも以上に自信に満ちているように感じた。
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