恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
今日は休日で一日中桜子と一緒にいた。
平日は家事などで忙しいだろうから休日くらい休んでいてほしいけど、そういうと桜子も俺と同じようなことを言う。

「はぁ、」

桜子が珍しくため息を溢して遠い目をしている。
その横で俺がどうしたの?と訊きながら先ほど桜子がいれてくれたコーヒーを飲む。

「幸せ太りですかね…めちゃくちゃ太ってしまって」
「そうなの?全然わからないけど」
「男はみんなそう言いますけど、太ったんです!倉田さんにもばれちゃって」
「倉田さん?」

しまった、という顔をしてあはは、と誤魔化して笑う彼女に容赦なく続ける。

「へぇ、そっか。倉田さんって桜子のそういうところも見てるんだ?」
「いえいえ、そんなことはないと思いますけど…」
「あそこの喫茶店って、ケーキも豊富だし、パンは店で作ってるんでしょう?それ、毎回貰ってくるからじゃない?」
「は!そうか…あれが原因か」
「じゃあ、アルバイトやめる方が早いね。すぐに痩せるんじゃない?」
「…」

にっこり笑ってそういうが、桜子の顔は笑うどころか引きつる一方だ。でも、俺の案は至極真っ当で彼女が押し黙ってしまうのは仕方がないだろう。

隣に座る桜子の腰に腕を回して引き寄せる。

「そんなに気にしなくていいよ。俺は別に気にしてないし」
「…そう、ですね」

複雑そうな顔をしながら視線を落とす彼女が可愛らしくて意地悪したくなる。
倉田さんが好きじゃないのは本当だけど、彼女が選んだアルバイト先を無理に辞めさせようとは思っていない。

「あ。そうだ。今日は先にいっておくよ」
「へ?」
「抱きたいから先に寝ないでね」

顔を真っ赤にして曖昧に頷く彼女はやっぱり世界で一番かわいいと思う。
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