恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
こんなに高熱を出す原因は何だろう。
疲れがたまるようなことはしていないし、規則正しい生活をしているし、寒い場所に長時間滞在したということもない。

季節的に乾燥しやすい時期だから風邪をひいたのだろう。

千秋さんは一時間おきに私の部屋をノックして冷えピタを取り替えたり、飲み物を持ってきてくれた。
…なんて優しい人なのだろうと思った。

うつらうつらとしていると、そのうち瞼が重くなって気が遠くなる。
また一時間後に千秋さんがそっとドアを開けて様子を見に来ると、その物音ではっと目を覚まして…を繰り返していた。


「あ、れ…?」

今何時だろう。私はまだ熱が下がらない体を起こして、頭痛が酷くて顔をしかめた。机に置いてある小さな木製の時計(私が自分の家から持ってきたもの)に目を向けると

「15時…」

もうこんなに時間が経過していたのかと思った。
熱は下がっただろうか、枕元に置いてある体温計で熱を測ると数秒でピピっとブザー音が鳴り37.6度と表示された。

まだ下がっていないのかぁ。と思ってまた眠りにつこうと瞼を閉じようとすると、

「ん、」

部屋の外から何か声が聞こえた。
それはリビングから聞こえてきて家には私と千秋さんしかいないはずなのに、なぜか女性の声がした。
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