お姫様は恋してる?
「な、何それ…お祖父様に取り消してって言うから。」

予想通りのことを言う一叶は、まだ会社や仕事のことなんか分かっていない。

まぁ、あののほほん社長の孫だから、そう思っても仕方ないか。

高階家に振り回されて、毒を吐いてきた俺の会社人生を振り返ってしまった。

「会社の決める事に社長の身内だからってわがままを通そうとするな。それに俺はいい機会だと思っている。」

「秀介?」

「向こうにいる間、連絡もしないし来ても会わない。俺がいない間、彼氏を作ってもいい…」

「何言ってるのよ。」

「俺も向こうで金髪美人に惚れ込んで帰って来ないかもしれない。お前も俺よりいい男がいれば、そいつと幸せになればいい。だがな。それでもやっぱり俺でいいなら、俺が戻って来たら嫁に来い。」

「ぷ、プロポーズ?」

「ちゃんと話、聞いてたか?まずはちゃんと年相応な世界で楽しめって言ってんだ。お互いそっちが良ければ、それでいいって考えろ。帰るぞ。」

少し突き放して言った。

同年代の男が掻っ攫っていく様子が頭に浮かんだが、30も歳上の俺から束縛は出来ないと首を振る。

それでもいいなら嫁に来いと伝えたのは、自分の事を忘れて欲しくないと言う俺の身勝手さかもしれない。

帰りは一言も口をきかず、一叶を自宅に送った。

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