【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「じゃあ、俺の何が知りたい? 形式上とはいえ一応は夫婦だ。何でも答えるよ」
ニヤリと口角を上げ不敵な笑みを浮かべる。 透き通った茶色の瞳が悪戯に揺れると、不覚にも胸がドキドキと揺らめいた。
「ちょ…ちょっと近い…」
「何だよ、恥ずかしがってんのか? 意外にうぶな所があるものだな。
見ず知らずの男と結婚するっつー女だから、そういうのは慣れてるもんかと思った。」
伊織さんの顔がどんどん近づいてくる。 それを振り払うように、ソファーから立ち上がる。
「止めてよ! 私が知りたいのはそういう事じゃないですから!
むしろ伊織さん自身はこの結婚の事をどう思っているんですか?!
私の事好きじゃないですよね?! 市ヶ谷さんから私と結婚すれば新しい事業を始める許可が得られるだけですよね?
私だってあなたの事は言えない!お母さんの借金の為にあなたと結婚した。 …でも本当にこのままでいいのか私はまだ疑問なんです」
そこまで言うと、伊織さんは面倒くさそうな顔をして体をソファーに預けた。
私だって今の状況のままでどうしたらいいか分からないのよ。