【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
それとも私の料理…美味しくないのだろうか…。
平凡な家庭料理だ。 お金持ちの家に産まれ舌は肥えているに違いない。
もっとすごい料理を作らなくてはいけないのだろうか。 そんな訳で沢山の料理本を買い足してしまった。
洗い物を終えてソファーに座り買った本をパラパラと捲る。
「フレンチとかの方がいいのかなあ…。
私の作る料理は平凡な料理ばかりだからなあ…」
料理の腕にはそれなりに自信があったから、伊織さんと食事を取った時はびっくりした。
無表情で出された物をひたすら食べ続ける。出された物を残したりはしないけれど、それ以上の感想もなし。
いつもいただきますとごちそうさまで一緒の食事時間を終える。 余りにも無言なものだから、私から話を掛ける事はなかった。
伊織さんの考えている事がさっぱり分からない。
ため息交じりで料理本を閉じるのと同時に、家のインターホンがなった。
オートロックを解除すると、直ぐに小早川さんが家の中へ入って来る。