優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
第32話 私はがんばりたい
目が覚めると髪に顔を埋めたまま、抱き締めて眠る壱哉さんがいた。
お、起きるに起きれない。
ど、ど、どうしたらいいの?
そうだ!
そっと抜け出ればいいのでは?
もぞもぞと腕から少しずつ抜けようとすると、突然、背後から首筋にキスを落とされ、抱き締められた。
声にならない叫び声を心の中であげた。

「お、起きてっ!?」

「休みたいな」

「だっ、だめですよ!みんな、壱哉さんを待ってますから!」

私が休むのと訳が違う。
耳元で笑う声がした。

「変わらないな」

「え?」

「なんでもない」

ぼすっと髪の中に顔を埋めたかと思うと、息を吐いた。

「仕方ない。仕事に行くか」

「あ、朝食を」

「六時半になったら、通いの家政婦がきて作ってくれる」

「は、はあ」

「家のことは心配しなくていい」

「でっ、でも、私、壱哉さんにお弁当を作りたいです」

「わかった。今日の帰りに買い物に寄れるように運転手に言っておこう」

当り前みたいに壱哉さんは言うけど、結婚してないのにこんな待遇でいいの!?
誰とも付き合ったことがないから、わからないけど、これが普通なの?
お昼くらいは私が作らないと気が済まない。
< 135 / 302 >

この作品をシェア

pagetop