優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
心の準備も覚悟もしていたけど―――私は自分がいかに無知なのかを知った。

「あっ、あのっ」

「いや?」

「い、いいえっ!」

嫌というより恥ずかしい。
別々にお風呂に入るのかと思っていたら、一緒に入るなんて思っても見なかった。
ちょっとも離れていたくないというように壱哉さんは私を背後から抱き締めたまま、体の隅々に触れ、耳から首筋へと何度も唇を這わせた。

「……っ、あっ……」

我慢しているのに声が漏れてしまう。
私の顔を覗き込むと壱哉さんがまた唇にキスをした。

「い、壱哉さっ……」

お湯と一緒に胸をすくいあげて、胸の突起を転がして声をあげさせた。
零れるお湯の音より、自分の声が響いて嫌で声を押し殺すと唇に指が触れた。

「日奈子。もっと声を聞かせて」

耳元で囁かれて熱い息がかかっただけで、下腹部がじんっと疼いた。
なんて壱哉さんは色っぽいのだろう。
ぬれた髪も潤んだ瞳も壱哉さんはきっと私より綺麗だ。
背中に唇が触れて、下へとゆっくりとなぞられ、ビクッと体が震えた。
さっきから体がおかしい。
ずっと熱くて、苦しくて。

「も、もぅ、む、無理ですから」

泣きそうな顔で訴えると、言葉をかき消して深く口づけた。

「大丈夫。何も怖いことはない」

私を安心させるために頬を優しくなでる大きな手。
微笑む顔は昔と同じ。
向けられる目も。
そうやって何度も私を守ってくれていた。
私の心を。
自分から壱哉さんに応えるようにキスをした。
こんな私でいいなら全部、私を壱哉さんにあげます。
だから、ずっとそばにいたい。
壱哉さんと―――
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