優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
無責任にも俺はぽんっと肩を叩いて、自分が王子をやらずに済んだことを内心、喜んでいた。
ホームルームが終わり、下校時間になると校門の前には黒塗の車がとまっていた。

「おかえりなさいませ、壱哉様」

「ただいま」

運転手は恭しく車のドアを開け、今日の午後からの予定を言った。

「ピアノのレッスンの後、英会話、夕食後に家庭教師の先生がいらっしゃいます」

「わかった」

今日も忙しいなと思いながら、車の窓の外を見た。
妹の学年は早く終わったのか、妹は乗っていない。
妹は妹で習い事をしているのだろうが―――
道端にスーパーの袋を重たげに持って、休んでいる子供がいた。

「止めてくれ」

「あ、ああ。またあの子ですか」

ランドセルは家に置いてきたのか、背中にリュックを背負って両手にスーパーの袋を持っていた。
リュックからはネギが見える。

「日奈子」

「あ……壱哉君」

日奈子は両手の平を赤くして、額に汗を浮かべていた。
呑海水和子の妹だが、性格はまったく違う。
仕事の両親を手伝い、周りに気を遣う優しい子だった。
我儘いっぱいで育った妹にも嫌なことを言われても友達でいてくれる貴重な存在だ。
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