優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
ちょっと混乱気味になりながら、返事をしたけど、二人でいたわけじゃないんだとわかると、ホッとした。
『ホッとした?』って最近、私は壱哉さんにたいして図々しい!?
「日奈子?どうかしたか?」
「い、いえっ!なにも」
パタパタと手を横に振って誤魔化した。
言えるわけない。
水和子お姉ちゃんと二人きりじゃなくて、安心しましたなんて―――
結局、水和子お姉ちゃんが二日酔いで具合が悪いのかどうか、聞けずに終わった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「日奈子は隣にいるだけでいいからな。緊張しなくていい。どうせ尾鷹(おだか)の一族しかいない」

「は、はい」

手に会議資料を持ち、緊張気味に返事をした。
今日、行われる取締役会は偉い人しかいないわけで……。
社長は壱哉さんのお父さんだよね。
昔から知っているとはいえ、壱哉さんの両親はちょっと苦手だった。
杏美(あずみ)ちゃんに招待されて誕生会に行っても私には冷たくて、お姉ちゃん達には優しいから。

「よっ!壱哉っ!」

廊下の向こうから、明るい体育会系の男の人が手をあげて壱哉さんに挨拶した。
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