キミを描きたくて
「もう自分に嘘なんてつきたくない。平気だなんて思えない」

「思わなくていいよ、依茉ちゃんはそのままがいちばん素敵なんだから」


どんどん流れてくる涙。
止められないそれを、必死に手の甲で拭う。

ずっと信じ続けていた母の言葉も、逃がさないと言いきった紫月くんも、私と兄の関係も何もかも、嘘だった。

それを、平気だなんて目を閉じる私ですら、何もかもが嘘つきで、真実なんてどこにもなかった。

樹は記憶喪失なんてしていないし、逃がさないと言った紫月くんは自分から離れていったし、血の繋がりなんてなかった。

その全てが、私にはとても重くて、平気だなんて嘘つける程じゃなくなってしまった。


「好きなだけ泣いて、好きなだけ一緒に笑おう。今日の夜は、お互い思ったことを沢山話そう」


それでいい、それがいい。

そう隼人くんが言うと、頭を撫でてくれる。
まるで、お兄ちゃんかのようだった。

樹が帰ってきたら、また2人で笑えるように。

もっと早く、私は平気な私に戻らなければならない。
それはマストで、逃れる手段なんてない。

私には逃げる方法も、逃げられる翼も何もかも、持っていないのだから。
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