キミを描きたくて

Side Ituki

突然だが、俺には天使としか思えない存在がいる。
名前を、早見依茉。

たった一人の俺の家族で、たった一人の理解者。
しかし、それを引き剥がす悪魔によって、俺たちはばらばらになってしまった。


でも、もうすぐまたひとつになれる。

また、天使に会える。


「何もかもありがとう、父さん」

「いいや、ボクは樹と依茉が幸せならそれでいい」


天使との出会いは、約12年前に遡るほど前だ。
ある日俺は、出会っては行けない禁忌に触れたかのような感覚に陥った。

俺はきっと、あの天使を守るために生まれてきたのだと。

だから、悪魔の存在だって乗り越えられた。


「けど、本当に依茉に秘密で帰るのか?」

「もちろん。依茉の驚く顔が見たいから」

「本当に依茉が好きだな、樹は」

「だってせめてもの夏休みは一緒にいたいじゃん。せっかく五年ぶりに会えるんだよ?しかも俺なんて記憶喪失って設定だったんでしょ?」


この夏、俺は天使にまた出会う。
それが楽しみで予定も前倒しで帰国した。

フランスの人々が恋しいかと聞かれたらパッとは答えられないけれど、天使に優るものはなかった。


「俺、依茉のために生きてるから」
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