キミを描きたくて
「依茉ちゃんの家、何回来ても立派だよね」

「うん。…私にも、もったいないなって思う」


オートロックを解除して、エレベーターに入る。
狭いエレベーターの中で、私たちの肩は触れ合っていた。

部屋の前に行ってドアノブを握ると、手汗を感じた。
今更緊張している。

いや、もっと前からか。


「入らないの?怖い?」

「…何をするつもりなの」

「なに、大人の話だよ。依茉ちゃんはまだわからないよ」

「言って。なんでわざわざ話す必要があるのか」


私たちの間の空気がピリつく。
そのピリピリとした感触が、とてつもなく嫌だ。

空気を打ち砕くかのように、突然扉が開く。
今では描けないその顔が、出てきた。


「何してるの依茉…って」

「紫月くん…だったよね?」


相対してはいけなかったはずのふたり。
私が何とかしなければならなかったのに。


「依茉。どういうこと?コイツと花火見に行ったの?」

「そうだよ。聞くところによると、君は他の女と歩いていたそうじゃないか」

「あれは…とりあえず、暑いんだから入れば」


紫月くんの顔が歪む。
ああ、彼は私を失うことを恐れているんだ。
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