キミを描きたくて
玄関から話し声がしてくる。
その音に、聞き耳を立てた。


「誰ー?俺の依茉に手出してるの」

「お兄さんですか?」

「…だから、誰だって聞いてんの」


聞いた事のない口調。
少し変わった声。

…本当に、これがお兄ちゃんなの?


「可愛い可愛い俺の依茉とデートなんかしちゃってさ。…で、どこにいんの」

「今、依茉ちゃんは会わせられる状況にありません」

「はぁ?オニイサマが帰ってきたんだから、いいだろ。てかここ俺の家だし」


邪魔なんだよ、と大きな声がする。
肩をビクッと震わせると、紫月くんが抱きしめてくれた。


「大丈夫、依茉。ひとりじゃない」

「行かなく、ちゃ…お兄ちゃん、のとこ」

「行かなくていい、今は危ないよ」

「でもっ…隼人くんが」


ドン、と大きな物音がする。
まるで壁を叩いたような音だった。

行かなきゃ。行かなきゃ、隼人くんが危ない。


紫月くんの静止を振り払い、立ち上がる。
その足は震えていて、少しづつ歩くしか無かった。

まずは、おかえりって…ちゃんと、言わないと。
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