キミを描きたくて

「狂いだした」

「は?イツキって…お兄ちゃん?」

「…夏休みがあける頃に、帰ってくるって」


急いで自分の部屋に駆け込み、スケッチブックを漁る。
どのスケッチブックを見ても同じ顔が描かれていて、それは樹に間違いなかった。

冷や汗が垂れる。

心の準備なんて、何もできていないのに。


そんな時、ピーンポーン…と、また音が鳴った。


「やめて、出ないで!」


床に手をついてそう叫ぶ。
私はまだ、あの人に会う顔なんてない。

でもインターホンは止まることなく鳴り続ける。


「紫月くん。依茉ちゃんのこと見ててくれるかな?僕が出るよ」

「…いや、危ないヤツだったらどうすんだよ」

「何度もスケッチブックで見た顔だ。…お兄ちゃんに、違いないよ」

「わかった、何かあったら叫べよ」


紫月くんが私の背中をさする。
優しく、それはとても優しく。


「怒りたかったけど…そんな展開じゃないね」

「どうして、どうしてなの…」

「大丈夫依茉、ここに俺がいる」

「樹、本物なの…?」


いいや、偽物かもしれない。
父の話も、全部嘘だったら。

ああ、それはなんて幸せなことなんだろう。
あんなに待ち望んでいたのに、どうして。
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