キミを描きたくて
兄の言っていることが何一つ分からない。
ただ分かるのは、この人も狂ってしまっていること。


「お兄ちゃん、そんなのお兄ちゃんじゃないよ」

「依茉、俺のこと忘れちゃった?記憶喪失になったの、依茉の方なんじゃないのー?」

「ちがう、ちがうよ。でも、それは間違ってるの」

「俺の可愛い依茉に手を出すなんて犯罪だよ。死んでいい」


樹が紫月くんと隼人くんを交互に睨みつける。
腕の力が弱まったその瞬間、私は逃げ出してベランダに駆け込んだ。


「これ以上話聞いてくれないなら、ここから飛び降りる」

「…は?何言ってるの、依茉」

「だって聞いてくれないもん、樹。ふたりは私のお友達だって」

「依茉、だからってそれはちがう、戻ってきて、依茉」

「そこから動かないで、近づかないで!!」


大きな声を出す。
樹は目を見開いて固まった。

紫月くん、隼人くんも同様に、私を見つめる。


「おかえり、樹。…ずっと待ってたんだよ、でも、こんな風になりたいわけじゃない」

「こんな風って、違う、俺はお前のために」

「私のお兄ちゃんは優しくて、お友達の話だって笑顔で聞いてくれるよ」


そう、私の樹は、こんなんじゃなかった。
< 186 / 201 >

この作品をシェア

pagetop