キミを描きたくて
それは確かな拒絶で、依茉が待ち望んでいた展開ではないことは明らかだった。
こんなことで、依茉を死なす訳には行かない。

でも、俺には何ができる?

俺は、依茉の何を知っている?


「おかえり、樹。ずっと待ってたんだよ、でも、こんな風になりたいわけじゃない」


依茉にとって俺らは"オトモダチ"。
やはり、付き合うという考えは依茉には植え付けられて居ないらしい。

だから、他の男と花火なんて行くんだ。

全て俺の計算ミス。
そのことに腹が立った。


「依茉、こっちおいで」


イツキがそう呼びかけても、依茉は反応せず、むしろベランダの柵によしかかる。

少しそれは低くて、依茉ならスルッと飛び降りてしまえそうだった。


「ねえ、仲直りしよう。少し興奮したんだ、久々の依茉との再会で」

「興奮?これが?狂ってるよ、お兄ちゃん」

「わかった、今日は帰るよ。日を改める。また、二人で話そう」


そういうと、イツキは俺とハヤトクンを睨みつけて玄関から出ていく。

スルスルと、依茉がベランダに座り込んだ。


「依茉ちゃん」

「依茉」


そう俺らが駆け寄ると、依茉はハヤトクンに抱きついた。

…ああ、そうだったんだ。
依茉の心には、こいつがいるんだ。

俺なんか、写ってすらいなかったんだ。


「違う、あんなのお兄ちゃんじゃない…!」

「でも、あの顔はお兄さんだ。そうだろう?」

「でも、でも…!」

「依茉、落ち着いて、とりあえず中入るよ」


危ない、そういうとハヤトクンが依茉を連れ出した。
< 188 / 201 >

この作品をシェア

pagetop