キミを描きたくて
紫月くんが私の上に馬乗りになる。
どう抵抗しようにも逃げられなくて、大人しく捕まる。


「今ここで依茉を殺せば、二人きりになれる?」

「…なんで」

「依茉、どうして俺のものにならないの」


代わりだって言ったの、あなたじゃない。

出しちゃいけないその言葉。
それが出た時、きっと紫月くんは崩壊してしまう。

…ああ、描きたい。
この、感情の複雑さを、この思いを。


「私は誰のものでも無いよ」

「違う、俺のもの」

「違うよ」

「彼女でしょ。ねぇ。逃がさないよ」


彼のこの思いには、一体何色が潜んでいるだろう?
どす黒さに、困惑の紫色、それから、興奮の赤色に…

こんな状況でも考えるのは絵のことばかりで、私は心底最低な人間だ。


「…もう行かなくちゃいけない時間だ」

「そっか、お父さんのお手伝いって言ってたよね」

「本当に、イツキと会うの?」

「…会うしか、ないよ」


そう、それは逃れられないこと。
まずは話し合うしかないのだ。

お互い、落ち着いた状態で。

…そうだ、いいことを思いついた。
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