キミを描きたくて
紫月くんが出て行ってしばらくした後、インターホンが鳴る。

やはり樹は鍵を持っていないらしい。


「…お兄ちゃん」

「依茉!昨日は本当にごめん、どうかしてたよ」


ごめんね、なんて差し出してくるのはケーキ屋さんの箱。
私がケーキ好きなのを、彼はとっても知っている。

コーヒーでも入れて、二人で話そう。


「話したいことがあるの、お兄ちゃんに」

「ああ、俺だってある。二人で話そう、お茶でも飲んで」

「今入れるよ、とりあえず暑いからテーブルで座って待ってて」


私はブラックコーヒーを、樹は麦茶を。
ケーキの箱にはふたつのショートケーキと、ふたつのプリンが入っていた。

ケーキをお皿に乗せて、運ぶ。


「…依茉、コーヒーなんて飲めるようになったのか」

「うん。コーヒーを飲むと作業が捗るんだ」

「ずっと子供のままだと思ってたけど…変わったんだな、本当に」


全ての用意を済ませて椅子に座る。
昔のように、対面で。
昔と同じように。


「勘違いしてた。依茉はもう大人になったんだな。」

「私も…昨日はあまりにも急で、どうかしてたみたい」

「父さんから、夏休み明けって聞いたんだろ?ごめんな、それよりも早く会いたくて」
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