キミを描きたくて
それから兄は、フランスでのことを語った。
起業したこと、十分な収益があること、ずっと仕送りを送っていたのは兄だということ、兄は人1人養える程の財力を手にしたということ。

それによって母からの罰のようなものを達し、帰ってこられたこと。


「で、まだ母さんが実家にいてさ、毎日毎日うるさいんだよ〜」

「ふふっ、ちゃんと準備してから離婚すればよかったのにね」

「それで、俺が母さんの方に行くことになった」

「え?お父さんじゃないの?」


だから苗字も変わる、と付け足すと、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
この男は、一体何を考えている。

目の奥底に眠る狂気。
それは赤とも黒とも青とも捉えられる炎のようで、思わずケーキを食べる手が止まる。


「ずっと考えてたんだ、依茉と結婚できたらって」

「…何言ってるの、お兄ちゃん」

「もちろん急がない。依茉が高校を卒業して、大学に行きたいならその後にでも」

「ちがう、ちがうよ。私たちは兄妹だよ」


やっと、お兄ちゃんが私に執着する理由が見えてきた。
やっと、その黒さが紅く狂気なものであるとわかった。
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