キミを描きたくて

「籠の檻」

次に目を覚ますと、見慣れた天井があった。
ちがうのは、足先と手首の重み。


「足枷…手錠…どうして」

「あ、起きた?」


ちょうど良かったよ〜、なんてお盆を運んでくる樹。
そこには湯気のたったトマトスープがあった。

それは記憶の中と全く同じ匂いだった。


「これを外してよ」

「ダメだよ。依茉はすぐどこかに行くんだから」

「こんなことして許されると思ってるの?」


樹の目には、私しか写っていなかった。
なんとかして、何とかして手錠だけでも外さなければ。

描くことすら出来ない、このままでは。

私から絵を取り上げられてしまえば、私の価値なんて無くなってしまう。

私からアトリエが消えれば、私の夢なんてものは無惨に消え去る。


「外してよ!!」

「何言ってるの、外は危ないよ。依茉はあの男たちに騙されてるんだよ」

「私から何もかもを奪おうとするな!!」

「依茉?落ち着いてよ」


お盆をベットサイドに置こうとする兄の手を蹴り飛ばす。
熱々のスープが私の足と樹の服にかかる。


「熱ッ…依茉、火傷してない?今拭くからね」

「私に触れるな!!」


今度は、近寄ってきた樹の顔を蹴り飛ばした。
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