キミを描きたくて
なぜ、なぜ私から何もかもを奪おうとする?
ずっとずっと、"兄"という存在さえも奪ってきたのに。

私から絵を奪うな、私から自由を奪うな。

私から、紫月くんと隼人くんを奪うな。


「私から家族を奪っておいて、これ以上何を奪いたいって言うの!?」

「そう興奮しないで、依茉。おちついて」

「手錠に足枷、これじゃ私はまともなデッサン1枚すら描きあげられない!アトリエに行けなきゃ、私はなにもできない!」


涙がこぼれ落ちる。
ああ、結局樹もわかってくれないんだ。

私には、絵しかないんだということを。

紫月くんは、私を逃がさないという。
隼人くんは、私を殺したいという。

樹は、私を閉じ込めてまで逃がさないという。


私にとって信用できる人物なんてひとりかいただろうか?

血の繋がりがないことを隠し続けていた父や母、所詮数ヶ月程度の付き合いでしかない美桜。

私にとって、心を開けているのは誰だ?


「わかった、わかったよ。手錠だけは外してあげる」

「足も外して、じゃないと舌を噛み切る」

「どうしてそんなに嫌なの?せっかく兄妹2人きりなのに」

「私から絵を奪おうとするな」


どんどん語気が強くなっていく。
でもここで抵抗しなければ、何とかして抵抗しなければ。

これ以上何かを失う前に。
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