キミを描きたくて
とんとん、と肩を叩かれ揺すられる。
薄暗くなったアトリエには、夕日ではなく月光が差し込んでいた。


月光に照らされる依茉ちゃん...
...僕も、一度君を描いてみたい。



「思ったより作業が進んで...あとは乾かして、明日また細かいところを調整します」

「明日は...土曜日か」

「ええ、空いてますか?」

「もちろん。今日と同じ時間からのシフトだから」

「わかりました」



じゃあ帰りますね、そうカバンを背負った彼女の細っこい腕を掴む。

青白い月光が差し込み、その肌は真白だ。



「...明日の11時、駅前でいい?」

「え?」

「少し話したいことがあってね。...依茉ちゃん、なにか今不安なことがあるでしょ」

「......」

「僕には全部わかる。だから、僕には全部話して」



気をつけて帰るんだよ、そう言うと彼女は俯いて、何も言わないまま帰っていく。

彼女が飲み残した冷めたコーヒーを、僕は飲み干した。
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