キミを描きたくて
兄に会いたい。
どうしようもないこの現状を打破して、慰めて、優しく抱きしめてほしい。


安心したい。安心感が欲しい。

この不安ばかり募っていく環境を、どうにかしてほしい。


でもそんなことを願ったって、お兄ちゃんは来てくれない。

もうお兄ちゃんは、私のお兄ちゃんではない。


思い返せば、幼い頃からなにかに依存してばかりだった。

絵だって、お兄ちゃんが、大好きだったから...


私にはわからない。
どうすればいいのか、私はどうすれば絵を捨てられるのか。

例え幸せを描いても、苦しみを描いても、動揺を描いても...誰も、それが幸せだと、苦しみだと、動揺なんだと気づかない。


どうしてこんなにも、芸術性がない人間ばかりなんだろう。

きっと、芸術家が私の絵を見たら、素晴らしいと絶賛してくれる。


...お兄ちゃんが見たら、よく描けているねと褒めてくれるはずなのに。


こんな小さいキャンバスで、こんな小さい絵だから...
誰の目にも、小さすぎて入らない。


描きたくてたまらない。
この感情を、不安を、全て色に置き換え、キャンバスになすり付け、忘れたい。

でもそんなことをするために立ち上がるのも、キャンパスを準備するのも、馬鹿らしい。

...きっと、どこか私はおかしいのだ。
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