キミを描きたくて

「わからないくせに」

「…まあ、大方お兄さんのことってところだろうね」


見透かしたような目。いや、見透かしたような、ではなくて、見透かした目。
私は彼に嘘などつけないのだ。真っ黒で奥行きのある目が、私を捕らえ込む。


「どうしても、会いたくなるんです」

「それは、どうして?」


じっと見つめる隼人くん。何度この質問を聞かれて、何度誤魔化してきただろう。
大体の人間は、会えないという事実を目の前にしたら、キッパリ…とまでは行かなくても、諦めがつくというものだ。


「5年前のことが、昨日の事のように思い出されます。お兄ちゃんが作ってくれたご飯の味も、抱きしめてくれた温かさも、一緒に動かした鉛筆の音も」

「会えないものは、もう会えないんだよ」

「っ…わかってる、わかってるよ」


どす黒い何かが私の中でたちこめていく。
でも、それをここで出すことなんてできない、そう、できないはずなのだ。


しかし、それを私は口に出してしまう。



「私の気持ちなんか分からないくせに、なんで隼人くんがわかったように語るの」
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