キミを描きたくて
「早見、体調悪いならもっと早く言えよ〜?
熱中症、どんどん増えてきてるんだからな」



早退届にハンコを押す担任。
こんなフラフラな状態で、私は家に帰れる気がしなかった。

でも、アトリエに彼がいるかわからない。
彼に土曜の謝罪と、あと少しで描き終わる絵の手伝いを頼みたかった。

弱っている時こそ、私は本領を発揮できる気がする。



「それじゃ、明日休むなら連絡しろよ。気をつけてな」


その担任の言葉に頭を少しだけ下げて、荷物を持って職員室を出る。

美桜ちゃんと担任が、私のカバンと弁当、スケッチブックなどを取ってきてくれた。


「依茉〜、大丈夫?」


そう廊下で声をかけてくるのは、大して知らない女子生徒。大丈夫、とだけ言って昇降口へ向かう。

チャイムがなって、みんなは5時限目へ。
私は、ひとりとぼとぼと、家に帰る気すら起きなかった。

ブーっ、ブーっ。
そうスマホがなったと思って耳に当てると、聞きたくもない声が聞こえてきた。


《今学校から連絡来たわよ。早退したの?》


あの忌々しい、母親の声だった。
私とお兄ちゃんを引き剥がした、あの悪魔。


《ちょっと、聞いてるの?依茉》


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