キミを描きたくて
「…うん、熱出ちゃって。最近毎晩アトリエに通ってたから、多分疲れが____」

《まだ絵なんかくだらない物やってるの?とっととやめて、学業に専念しなさい》

「……そう、だね」

《あなたは頭いいんだから。ちゃんとした学校行って貰わないと困るわよ》


私の絵を侮辱するな。
感性もありゃしないような一般人が、絵を侮辱するな。

元々私が高校に入学したのだって絵による推薦で、お母さんだって名門だとたいそう喜んでいたはずだ。

なのに、なんで。なんで、なんで私は、私はお兄ちゃんと違って、絵を描いちゃいけない?


《それと、今年の夏は実家帰ってくるの?》

「…うーん、まだわからないかな」


ジリジリと、日差しが私を照らす。
熱で暑いのか、日光で暑いのか。それすらわからなかった。


《ったく、どうせ遊んでばっかりなんでしょう。夏休み前のテストで点数取れなかったら、わかってるわよね?》

「うん、わかってる、わかってるから。もう、体調が悪いから切るよ」

《昔からわかったわかったって言って、ほんとに分かってたことなんてひとつもな____。》


ツーっ、電話が切れた。
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