キミを描きたくて
「ああ…多分、あと一週間くらいで終わるとは思います」

「ふうん。あ、夏休みいつ空いてるの?」

「えーと…まあ特に部活もないですし、これと言った予定は無いです」


あと二週間ほどで来る夏休み。
美術部は夏休み中の活動はない。

文化祭のための絵を描きたい人だけ、美術室に来る程度らしい。


「学校で絵を描かなくても、アトリエがありますから」


画材置きっぱなしなので。
そう言うと、つまらなさそうにトマトリゾットを混ぜる。


「花火大会、あるの知ってる?」

「ああ、毎年やってますよね。いつもベランダで見てます」

「意外、そういうの興味無いと思った」


彼の中の私はきっと、絵が好きで好きで仕方の無い女だ。
…まあ、あながち間違いではない。

でも花火は、紺色のキャンバスに絵の具を散りばめたようなもので、私はとても美しく感じる。

花火は、昔から大好きだ。


「今年は俺と見に行こうよ」

「…現地ですか?」

「そう。人混みとか嫌?」

「あまり得意では、無いです」


そういうと、わかった、とトマトリゾットを口に運ぶ。
誰かと花火を見るのも悪くないが、人混みは苦手だ。

毎日の通学の電車も、私は好きではない。


「じゃあ、ベランダで見よう」
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