キミを描きたくて
「ところで、うなされてたけど、なんの夢を見てたの?」
「え?」
「一応布団まで運んだけど…ずっと、悪夢見てるみたいにうなってたよ」
カマをかけた。
しかし彼女はとぼけた。
嘘だ、絶対に、忘れているはずなんかない。
俺の知らない男の夢を見て、嫌な夢だったはずがないのだ。
そんな目の前の女に腹を立てつつ、一緒に布団に入る。
体調が悪いのか、すぐに依茉の寝息が聞こえた。
「…依茉」
当然、返事なんてかえってこない。
向けていた背を返し、そっと抱きしめる。
「俺は、好きだよ」
"俺は"。
依茉はきっとと俺の事なんて眼中にもないんだろう。
きっと、ハヤトクンや、いつき…とやらの方が、いいのだろう。
…幼い頃から、大体のものを与えられてきた。
欲しいと一言いえば、どんな大金でも出す、そんな親。
いつかは親の会社を継ぐ俺のため。
全ては、会社のためだった。
それに、この容姿のおかげで、どれだけ高嶺の花として扱われる女もすぐに手に入れられた。
…案外、依茉の言う通りなのかもしれない。
好きでもない女に簡単に手を出す男。
他人からの評価を元に価値を見出し、他人の欲しがるものを簡単に手に入れる。
それでも、俺は俺の方に向かない依茉を、どうしても今は振り向かせたい。