キミを描きたくて
Side Shizu
「いつ、き…」
依茉が熱を出して早退したと聞いて、俺は直ぐにマンションに向かった。
部活も休んで、買い物までして。
リビングで横たわる彼女の頬は赤く、熱を出しているのはひと目でわかった。
「…いつき?」
まただ、また知らない男の名前。
ハヤトクンといい、依茉のスマホを盗み見たとて知らない交友が、俺でさえ知れない交友がある。
誰だ、今度はどこのどいつだ。
ハヤトクン…本名は阿部隼人。
近くの医大に通う、大学一年生。
精神科医を志し、依茉のよく行くアトリエカフェのバイト店員。
サラッと親の力で調べたが…別にあの男は、絵が好きな訳ではなさそうだった。
…まあ、どうせ依茉に気があるんだろう。
容姿端麗で、優秀。将来有望。日本とフランスのハーフで、フランス語もある程度できる。
そんな彼女に、惹かれない部分はない。
「いか、ないで…いつき…」
苦しそうな、か細い寝言。
なあ、お前はなんの夢を見て、どの男に想いを寄せているんだ。
起こしたい気持ちでいっぱいだったが、体調が悪いなら、仕方ない。
そう思ってそっと抱きかかえ、彼女の部屋へ運んだ。