キミを描きたくて
「私と絵があればいいって何度も言う依茉が、どうしても憎かった」

「うん」

「でも…3ヶ月、もう3ヶ月なのね…。入学してから3ヶ月、急に彼氏ができたと思えばこんなアトリエなんか連れてきて」


泣きながら、少し楽しそうに話す美桜ちゃん。


「ほんとに馬鹿よ、依茉。熱出した時、あんたのスケッチブック見たわ。ずっとお兄さんのこと絵に描いて…人が良すぎるのよ」

「…そっか、ありがとう」

「内気なくせに、大胆な絵ばっかり描く。…そうよ、私だって依茉と依茉の描く最高の絵があればそれでいいの」


美桜ちゃんが椅子から立ち上がる。
そしてこっちに近づいたかと思うと、そっと座ったままの私を抱きしめた。


「もうすぐ秋になるわね。…でも、きっと依茉の会いたい人なんて帰って来ないわ」

「…いや」

「いいじゃない、帰ってこなくても。私がいる。あんたが期待する感想以上の評価を、私が依茉の絵につけ続けるから、だから」


もう、やめてほしいの。


綺麗な美桜ちゃんの、震える声。
…そう、樹はきっと、今年も帰ってなんてこない。

でも、少し期待してしまっている自分は消えやしない。
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