キミを描きたくて
僕は、父の言っている意味がわからなかった。
別に、行きたくないところに苦しんでまで行く必要なんてない。
なのに、ずっと父は、僕のことを何も分かってくれはしなかった。

学校に行けなければ、暴力を振るう。
そんな父に逆らえるはずもなく、僕は学校に行くふりばかり。

でも学校の先生から話は伝わってしまって、結局殴られる。


「もう、見てられないのよ!隼人のことも、学校ごときで暴力振るうあなたも!」


そう言って、母親は家を出ていった。
俺を救い出してくれるわけでもなく、ただ、自分が助かりたいがために。

それから父は、酒に溺れた。
弁護士の姉は、早くに家を出て行った。
今はもう何をしているのかすら、誰も知らない。


「なあ…隼人はこんなお父さんのこと、置いていかないよな、な?」

「…僕は、父さんを許せないよ」

「はっ、実の親すら敬えねえのかお前は!」


そんな時間を何とか耐え、高校になって家を飛び出した。
…それでも仕送りをしてくれたのは、微かな父の愛だった。

高校生になってすぐにバイトを始めた。
その時、僕は天使に出会った。
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