愛は愛より愛し
てきとうに声をかけてみる。もう少し放っておけば、酔っぱらいたちがその男の胸ぐらを掴みかかりそうな雰囲気だったので。
すると、男は無表情を一変。目をぱちくり。
「そうですね、それが良い」
良い提案だ、と指を鳴らした。どこかの上司に居そうなその佇まいに、私は思わず笑ってしまった。
「恐喝で引っ張ってもらいましょう」
清々しい笑顔に、少しばかり恐怖を覚える。
先程まで、聞こえていないような顔をしていたのに、というか今だってジロジロと見られているのに、私の方しか見ていない。
まあいいか、と私はスマホのロックを外す。それを見た酔っぱらいたちはそそくさと喫煙所を出ていった。