愛は愛より愛し
静かになった喫煙所。
私はスマホを戻し、煙草を灰皿に擦り付けた。
「ありがとうございます、助かりました」
にこ、と男がこちらに手を差し伸べる。
握手? なぜ。
その顔を正面から見ると、欧州のハーフなのだろうか。色素の薄い髪色とブルーグレーの瞳が美しく見えた。
挨拶か。
それなら、と軽い気持ちで私も手を差し伸べる。併せに行った手が、迎えられてぐっと引き寄せられた。
その強さに驚き、よろける。手に持った煙草のケースを落としそうになった。
「名前、何ていうの?」
目に入った時計がきらりと光る。