愛は愛より愛し
そしてその後ろから、再度世名を呼ぶ女性の声。
というか、その女性にこのライターをあげれば喜んだのでは。
「呼ばれてますよ。電話してすみません、じゃあ」
『閑野さん。僕、今日の誕生日が人生で一番嬉しい』
弾んだ声が聞こえる。
何を、子供みたいなことを。
「29年生きてきて?」
『そう。29年生きてきて』
「私は24年ほど生きてますが、人生で一番戸惑ってます」
『え、どうして?』
今までの会話の何を聞いていたのか。
私は暗い空を仰ぐ。星がぽつぽつと見えた。
「プレゼントはされたらそれ相応のものを返さないといけないじゃないですか」