【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。
「お陰で私、裏では『先生発見機』なんてあだ名付けられているんですよ」
そう宏海さんに話すと彼女はクスッと笑みを漏らす。確かにここでお昼寝したら気持ち良さそうだもの、と。
そしてその後「あ、」と何か思い出したように彼女は声を上げた。
「・・・そういえば私の好きだった人も、サボリ癖があったわね。本が好きだったからよく図書室にいたような気がする」
「そんな人を好きになったんですか?・・・あ、す、すみません」
好きな人を「そんな人」呼ばわりしてしまったことに直ぐに気づいて、謝罪を入れる。
優しい彼女は「いいのよ別に」と気分を悪くしていないようで、私はほっと胸をなでおろした。
「ふふ、そんなところが放って置けなかったのかもね」
(でも、もしかしたらそれって───)
もしかしたら好きだった人は宏海さんにわざと迎えに来てもらっていたのかもしれない。そう私は思った。
彼女に居場所が分かる様に毎回図書室に行って、わざと姿を隠していたのかもしれない。そうしたら彼女が迎えに来てくれるから。
「宏海さんは、とても面倒見がいい方なんですね。学級委員長とかやってたタイプですか?」
「ふふ、正解よ。それも3年間ずっとね」
きっとそんな毎日が彼女も、その人も、好きだったのだろう。きっとこの空間と距離感が2人にとって心地が良かったのだろうと私は思った。