【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。


 志望校どころか具体的な将来の夢ですら決まっていないのだ。

 他の同級生はすでに皆志望校をあっという間に決めて、今この時間も勉強しているというのに。


「早く決めなきゃいけないんですけどね」


 そしてその状況下の中焦りを感じていない自分自身が一番の原因だろう。担任の先生にも早く進路調査希望を出せと昨日も口酸っぱく言われているし、友人にも「まだ決めてないの?」と呆れられたばかりだ。

 早く決めて志望校を絞らないと対策が追いつかないことだって分かってる。でも焦って適当に決めた進路をこの先歩んでいいのかとも考えてしまう。

 ぐるぐると回り続ける思考と夏の暑さも相まって体調にも影響を及ぼしていた。

 すると宏海さんは少し考えた後に「じゃあ」と言葉を発する。

「美術の先生とかは?私、美術の先生になるのが夢だったの!」
「・・・美術の、先生ですか」
 
 もちろん考えたことはある。2年生の最初の頃は第一希望を美大にしていたこともある。

 理由は先生になって絵が好きだからとか絵を教えてあげたいとかそういうのではなく、ただ単に得意科目だから。
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