【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 恋愛話が大好きだという女神レクトマリア。
 愛する人のために強くなれと教えてくれた女神様。

「愛を司る女神様が、愛も恋もないような聖女の献身を望むでしょうか」

 むしろ自分の幸せは自分で動いてつかみ取れと言うのではないだろうか……。

「平民の小娘がわかったようなことを」
「申し訳ありません。でも、わたしはこのことを陛下にお話したかったのです。女神様の真の願いをもう一度考えてみていただきたくて」

 陛下は苦虫をかみつぶしたような顔で、わたしを見下ろしている。
 王太子様は何かを考えこんでいるような表情だった。

「さあ、遊びは終いだ。エウスタシオ、今度こそ出ていけ。私はレクトマリア神聖王国の国王だ。聖女マリアーナの初夜権は私にある」
「父上……!」

 王太子様の腕を後ろにねじあげ、陛下は王太子様を力ずくで双月の間から出した。
 ガチャと内扉に鍵がかけられる。
 続いて、陛下は廊下への扉も施錠した。

「聖女殿、もう逃げられぬぞ」

 昏い炎が陛下の瞳に灯った。
 大人の余裕を見せて微笑むいつもの陛下ではない。獲物を見定めた肉食獣のような猛々しい気配がにじみ出る。
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