【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 本能的な恐怖がこみあげた。

 逃げなければ……!

「窓、は……」

 だめだ。
 ここは高さのある三階建ての建物の最上階。とても窓からは下りられない。
 それでも窓に駆け寄り外を見ると、煌々と明るい月光が広い庭園を照らしていた。

 聖女継承の儀は女神レクトマリアの力が最も強くなる月の満ちる夜に行われる。
 今夜は、その満月の夜。

「私では不満か?」

 陛下の大きな体がゆっくりとわたしに近づいてくる。

「良くしてやろう。若造にはできぬほどにな」

 声も出なかった。
 絶体絶命の窮地なのに手も足も動かない。

「マリアーナ、寝台に行くぞ」

 わたしは簡単に囚われ抱きあげられ、広い寝台の真っ白なシーツの上に落とされた。



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