【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「これは王家に伝わる秘薬だ。閨事を営むたびに盃一杯を飲むと、子を孕まなくなる」
「営むたびに……?」
「そうだ。抱かれる時は毎回必ず服するのだよ」

 王家の秘薬。
 子ができなくなるというのは、女神様の神力ではなく秘薬のせいだったんだ……。

「孤月の誓いとは……この薬を飲むことなのでしょうか」
「秘薬を飲むと誓うこと、だな。避妊だけではなく、興奮を高める媚薬としての効果もある」
「び、媚薬……?」
「怯えているのか? だが、すぐに恐れなどなくなるから安心しなさい」

 盃が口もとに差し出される。
 わたしは首を振って拒絶したが、陛下に顎を押さえられ口を開けさせられた。

「んん……!」

 口内に甘くてとろりとした液体が入ってくる。陛下の大きな手のひらに鼻と口を覆われて息ができない。秘薬を飲みこむしかなかった。
 冷たい液体が喉を通り、体の隅々まで浸透していく。

「…………っ」

 そのまま陛下にきつく抱きしめられていると、次第に体が熱く息が荒くなってきた。
 たまらなくなって陛下を上目遣いに見上げると、陛下は体の奥に響くような低い声でささやいた。

「初夜の儀を始める」
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