【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「……王家の秘薬。避妊のために飲まされて……媚薬の効果もあるって」
「チッ……クソが!」
「えっ?」
「いや、すまない。王家なんて阿呆ばっかりだな」

 阿呆!
 ヴォルフの砕けた口調にくすくすと笑ってしまう。

「王族に阿呆なんて言えるのはきっとヴォルフくらいよ。今は……ちょっと胸がどきどきするけど、熱は治まっているみたい」

 もう薬が消えたのならいいけど……、体の奥にはまだ何かがある気がした。薬の効果には波があるのかもしれない。

「こっちが入口だ」

 大樹の裏側には、根もとから枝分かれしたもう一本の木が立っていた。大樹よりは細いけれど、十分に立派な木だ。
 その木の幹を取り巻いて螺旋階段があった。

「階段……? ええ!? もしかしてこれ、おうちなの!?」

 木の上には小さな家が建っていた。太い枝をまたぐように床が作られ、丸太を組んで壁にしてある。
 のどかな田園風景が似合いそうな可愛らしい小屋だった。
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